第1帖「桐壺」(16)御前より、内侍、宣旨うけたまはり
原文・語釈 御お前まへより、内侍ないしのすけ、宣旨うけたまはり伝えて 御前まへより、内ない侍し、宣せん旨じうけたまはり伝へて、大臣おとど参まゐりたまふべき召めしあれば、参まゐりたまふ。御禄ろくの物もの、上うへの命婦みや...
原文・語釈 御お前まへより、内侍ないしのすけ、宣旨うけたまはり伝えて 御前まへより、内ない侍し、宣せん旨じうけたまはり伝へて、大臣おとど参まゐりたまふべき召めしあれば、参まゐりたまふ。御禄ろくの物もの、上うへの命婦みや...
原文・語釈 この君の御童わらは姿、いと変へまうく思せど この君の御童姿わらはすがた、いと変かへま憂うく思おぼせど、十二にて御元服げんぶくしたまふ。居起ゐたち思おぼしいとなみて、限かぎりあることにことを添そへさせたまふ。...
原文・語釈 藤壺と聞きこゆ 藤壺ふぢつぼと聞きこゆ。げに御かたち、ありさま、あやしきまでぞおぼえたまへる。これは人の御際きはまさりて、思おもひなしめでたく、人もえおとしめきこえたまはねば、うけばりて飽かぬことなし。かれ...
原文・語釈 年月に添そへて、御息所の御ことを 年月としつきに添そへて、御息所みやすんどころの御ことを思おぼし忘るる折ををりなし。慰なぐさむやと、さるべき人々を参まゐらせたまへど、なずらひに思おぼさるるだにいとかたき世か...
原文・語釈 そのころ、高麗こま人の参まゐれるなかに そのころ、高麗こま人うどの参まゐれるなかに、かしこき相人さうにんありけるを聞きこしめして、宮の中うちに召めさんことは宇多うだのみかどの御誡いましめあれば、いみじう忍し...
原文・語釈 月日経て、若宮参まゐりたまひぬ 月日経へて、若宮参まゐりたまひぬ。いとどこの世のものならず、きよらにおよすげたまへれば、いとゆゆしう思おぼしたり。 明あくる年としの春、坊定ばうさだまりたまふにも、いと引ひ...
原文・語釈 風の音、虫の音につけて 風かぜの音おと、虫むしの音ねにつけて、もののみ悲しう思おぼさるるに、弘徽こき殿でんには、久しく上うへの御局つぼねにも参まう上のぼりたまはず、月のおもしろきに、夜よふくるまで遊あそびを...
原文・語釈 いとこまやかにありさま いとこまやかにありさま問とはせたまふ。あはれなりつること忍しのびやかに奏そうす。御返り御覧ずれば、 「いともかしこきはおき所どころもはべらず。かかる仰おほせ言ことにつけても、かきくら...
原文・語釈 月は入り方に、空きよう澄みわたる 月は入いり方がたに、空きよう澄すみわたれるに、風いと涼すずしくなりて、草むらの虫の声々こゑごゑもよほし顔がほなるも、いと立たち離れにくき草のもとなり。 鈴虫の声こゑの限...