第1帖「桐壺」(12)そのころ、高麗人の参れるなかに
原文・語釈 そのころ、高麗人の参れるなかに そのころ、高麗こま人うどの参まゐれるなかに、かしこき相人さうにんありけるを聞こしめして、宮の中うちに召さんことは宇多うだのみかどの御誡いましめあれば、いみじう忍びてこの御子を...
原文・語釈 そのころ、高麗人の参れるなかに そのころ、高麗こま人うどの参まゐれるなかに、かしこき相人さうにんありけるを聞こしめして、宮の中うちに召さんことは宇多うだのみかどの御誡いましめあれば、いみじう忍びてこの御子を...
原文・語釈 月日経て、若宮参りたまひぬ 月日経へて、若宮参まゐりたまひぬ。いとどこの世のものならず、きよらにおよすげたまへれば、いとゆゆしう思おぼしたり。 明あくる年としの春、坊定ばうさだまりたまふにも、いと引き越こ...
原文・語釈 風の音、虫の音につけて 風かぜの音おと、虫むしの音ねにつけて、もののみ悲しう思おぼさるるに、弘徽こき殿でんには、久しく上うへの御局つぼねにも参まう上のぼりたまはず、月のおもしろきに、夜よふくるまで遊あそびを...
原文・語釈 いとこまやかにありさま いとこまやかにありさま問とはせたまふ。あはれなりつること忍びやかに奏そうす。御返り御覧ずれば、 「いともかしこきはおき所どころもはべらず。かかる仰おほせ言ことにつけても、かきくらす乱...
原文・語釈 月は入り方に、空きよう澄みわたる 月は入いり方がたに、空きよう澄すみわたれるに、風いと涼すずしくなりて、草むらの虫の声々こゑごゑもよほし顔がほなるも、いと立ち離れにくき草のもとなり。 鈴虫の声こゑの限り...
原文・語釈 くれまどふ心の闇も、耐へがたき片端を 「くれまどふ心の闇やみも、耐たへがたき片端かたはしをだに晴はるくばかりに聞きこえまほしうはべるを、私わたくしにも心のどかにまかでたまへ。年としごろ、うれしく面おも立だたし...
原文・語釈 しばしは夢かとのみたどられしを 「『しばしは夢かとのみたどられしを、やうやう思おもひ静しづまるにしも、さむべき方かたなく耐たへがたきは、いかにすべきわざにかとも問とひ合あはすべき人ひとだになきを、忍しのびては...
原文・語釈 はかなく日ごろ過ぎて はかなく日ひごろ過すぎて、後のちのわざなどにもこまかにとぶらはせたまふ。ほど経ふるままに、せむ方かたなう悲かなしう思おぼさるるに、御方々かたがたの御宿との直ゐなども絶たえてしたまはず、...
原文・語釈 御胸つとふたがりて 御胸むねつとふたがりて、露つゆまどろまれず、明かしかねさせたまふ。御使つかひの行ゆき交かふほどもなきに、なほいぶせさを限かぎりなくのたまはせつるを、 「夜中うち過すぐるほどになん絶たえ果...