第2帖「帚木」(2)つれづれと降り暮らして
原文・語釈 つれづれと降り暮らして つれづれと降ふり暮くらして、しめやかなる宵よひの雨に、殿上てんじやうにもをさをさ人少ひとずくなに、御宿直所とのゐどころも例れいよりはのどやかなる心ここ地ちするに、大殿油おほとなぶら近...
原文・語釈 つれづれと降り暮らして つれづれと降ふり暮くらして、しめやかなる宵よひの雨に、殿上てんじやうにもをさをさ人少ひとずくなに、御宿直所とのゐどころも例れいよりはのどやかなる心ここ地ちするに、大殿油おほとなぶら近...
原文・語釈 光源氏、名のみことことしう 光源氏ひかるげんじ、名のみことことしう、言いひ消けたれたまふ咎とが多おほかなるに、いとどかかるすきごとどもを末すゑの世にも聞きき伝つたへて、軽かろびたる名をや流ながさむと、忍びた...
いづれの御時にか いつの帝の御時でしたか、数多くの女御や更衣が御仕えしていた中に、それほど高貴な家筋ではないのに、誰よりも帝に寵愛されている人がおりました。後宮に入った時から「わたしこそが」と思い上がっている女御たちは...
いづれの御時にか いづれの御時おほんときにか、女御にようご、更衣かういあまたさぶらひたまひける中に、いとやんごとなき際きはにはあらぬが、すぐれて時ときめきたまふありけり。はじめより、「我は」と思おもひ上あがりたまへる御...
原文・語釈 源氏の君は、上の常に召しまつはせば 源氏の君は、上うへの常に召めしまつはせば、心やすく里さと住ずみもえしたまはず。心のうちには、ただ藤壺ふぢつぼの御ありさまをたぐひなしと思おもひきこえて、さやうならん人をこ...
原文・語釈 御前より、内侍、宣旨うけたまはり伝えて 御前まへより、内ない侍し、宣せん旨じうけたまはり伝へて、大臣おとど参まゐりたまふべき召めしあれば、参まゐりたまふ。御禄ろくの物、上うへの命婦みやうぶ取りてたまふ。白し...
原文・語釈 この君の御童姿、いと変へまうく思せど この君の御童姿わらはすがた、いと変かへま憂うく思おぼせど、十二にて御元服げんぶくしたまふ。居起ゐたち思おぼしいとなみて、限かぎりあることにことを添そへさせたまふ。ひとと...
原文・語釈 藤壺と聞こゆ 藤壺ふぢつぼと聞こゆ。げに御かたち、ありさま、あやしきまでぞおぼえたまへる。これは人の御際きはまさりて、思おもひなしめでたく、人もえおとしめきこえたまはねば、うけばりて飽かぬことなし。かれは人...
原文・語釈 年月に添へて、御息所の御ことを 年月としつきに添そへて、御息所みやすんどころの御ことを思おぼし忘るる折をりなし。慰なぐさむやと、さるべき人々を参まゐらせたまへど、なずらひに思おぼさるるだにいとかたき世かなと...