【全文】第1帖「桐壺」原文(ルビ付き)
いづれの御時にか いづれの御時おほんときにか、女御にようご、更衣かういあまたさぶらひたまひける中に、いとやんごとなき際きはにはあらぬが、すぐれて時ときめきたまふありけり。はじめより、「我は」と思おもひ上あがりたまへる御...
いづれの御時にか いづれの御時おほんときにか、女御にようご、更衣かういあまたさぶらひたまひける中に、いとやんごとなき際きはにはあらぬが、すぐれて時ときめきたまふありけり。はじめより、「我は」と思おもひ上あがりたまへる御...
原文・語釈 源氏の君は、上の常に召しまつはせば 源氏の君は、上うへの常に召めしまつはせば、心やすく里さと住ずみもえしたまはず。心のうちには、ただ藤壺ふぢつぼの御ありさまをたぐひなしと思おもひきこえて、さやうならん人をこ...
原文・語釈 御前より、内侍、宣旨うけたまはり伝えて 御前まへより、内ない侍し、宣せん旨じうけたまはり伝へて、大臣おとど参まゐりたまふべき召めしあれば、参まゐりたまふ。御禄ろくの物、上うへの命婦みやうぶ取りてたまふ。白し...
原文・語釈 この君の御童姿、いと変へまうく思せど この君の御童姿わらはすがた、いと変かへま憂うく思おぼせど、十二にて御元服げんぶくしたまふ。居起ゐたち思おぼしいとなみて、限かぎりあることにことを添そへさせたまふ。ひとと...
原文・語釈 藤壺と聞こゆ 藤壺ふぢつぼと聞こゆ。げに御かたち、ありさま、あやしきまでぞおぼえたまへる。これは人の御際きはまさりて、思おもひなしめでたく、人もえおとしめきこえたまはねば、うけばりて飽かぬことなし。かれは人...
原文・語釈 年月に添へて、御息所の御ことを 年月としつきに添そへて、御息所みやすんどころの御ことを思おぼし忘るる折をりなし。慰なぐさむやと、さるべき人々を参まゐらせたまへど、なずらひに思おぼさるるだにいとかたき世かなと...
原文・語釈 そのころ、高麗人の参れるなかに そのころ、高麗こま人うどの参まゐれるなかに、かしこき相人さうにんありけるを聞こしめして、宮の中うちに召さんことは宇多うだのみかどの御誡いましめあれば、いみじう忍びてこの御子を...
原文・語釈 月日経て、若宮参りたまひぬ 月日経へて、若宮参まゐりたまひぬ。いとどこの世のものならず、きよらにおよすげたまへれば、いとゆゆしう思おぼしたり。 明あくる年としの春、坊定ばうさだまりたまふにも、いと引き越こ...
原文・語釈 風の音、虫の音につけて 風かぜの音おと、虫むしの音ねにつけて、もののみ悲しう思おぼさるるに、弘徽こき殿でんには、久しく上うへの御局つぼねにも参まう上のぼりたまはず、月のおもしろきに、夜よふくるまで遊あそびを...