第2帖「帚木」(8)また、絵所に上手多かれど
原文・語釈 また、絵所に上手多かれど また、絵所ゑどころに上手多おほかれど、墨すみ書がきに選えらばれてつぎつぎに、さらにおとりまさるけぢめふとしも見みえ分わかれず。かかれど、人の見みおよばぬ蓬莱ほうらいの山、荒海あらう...
原文・語釈 また、絵所に上手多かれど また、絵所ゑどころに上手多おほかれど、墨すみ書がきに選えらばれてつぎつぎに、さらにおとりまさるけぢめふとしも見みえ分わかれず。かかれど、人の見みおよばぬ蓬莱ほうらいの山、荒海あらう...
原文・語釈 あしくもよくもあひ添ひて あしくもよくもあひ添そひて、とあらむ折をりも、かからんきざみをも見過みすぐしたらん仲こそ、契り深ふかくあはれならめ、われも人もうしろめたく心おかれじやは。また、なのめに移うつろふ方...
原文・語釈 いまはただ、品にもよらじ 「いまはただ、品しなにもよらじ、かたちをばさらにも言いはじ。いとくちをしくねぢけがましきおぼえだになくは、ただひとへに、ものまめやかに静しづかなる心のおもむきならむ寄よるべをぞ、つひ...
原文・語釈 必ずしもわが思ふにかなはねど 必ずしもわが思おもふにかなはねど、見みそめつる契ちぎりばかりを捨すてがたく、思おもひとまる人はものまめやかなりと見みえ、さて保たもたるる女のためも心にくくおしはからるるなり。さ...
原文・語釈 もとの品、時世のおぼえうちあひ 「もとの品しな、時とき世よのおぼえうちあひやむごとなきあたりの、うちうちのもてなしけはひおくれたらむはさらにも言はず。何なにをしてかく生おひ出いでけむと、言いふかひなくおぼゆべ...
原文・語釈 うちほほゑみて うちほほゑみて、 「そのかたかどもなき人はあらむや」 とのたまへば、 「いとさばかりならむあたりには誰たれかはすかされ寄よりはべらむ。取とる方かたなく口くち惜をしき際きはと、優いうなりとお...
原文・語釈 つれづれと降り暮らして つれづれと降ふり暮くらして、しめやかなる宵よひの雨に、殿上てんじやうにもをさをさ人少ひとずくなに、御宿直所とのゐどころも例れいよりはのどやかなる心ここ地ちするに、大殿油おほとなぶら近...
原文・語釈 光源氏、名のみことことしう 光源氏ひかるげんじ、名のみことことしう、言いひ消けたれたまふ咎とが多おほかなるに、いとどかかるすきごとどもを末すゑの世にも聞きき伝つたへて、軽かろびたる名をや流ながさむと、忍びた...
いづれの御時にか いつの帝の御時でしたか、数多くの女御や更衣が御仕えしていた中に、それほど高貴な家筋ではないのに、誰よりも帝に寵愛されている人がおりました。後宮に入った時から「わたしこそが」と思い上がっている女御たちは...