第2帖「帚木」(17)すべて男も女も、わろものは
原文・語釈 すべて男も女も 「すべて、男も女もわろものは、わづかに知しれる方かたのことを残のこりなく見みせ尽つくさむと思おもへるこそ、いとほしけれ。三史五経さんしごきやう、道々みちみちしき方かたを明あきらかに悟さとり明あ...
原文・語釈 すべて男も女も 「すべて、男も女もわろものは、わづかに知しれる方かたのことを残のこりなく見みせ尽つくさむと思おもへるこそ、いとほしけれ。三史五経さんしごきやう、道々みちみちしき方かたを明あきらかに悟さとり明あ...
原文・語釈 さて、いと久しくまからざりしに 「さて、いと久ひさしくまからざりしに、もののたよりに立たち寄よりてはべれば、常つねのうちとけゐたる方かたにははべらで、心やましきもの物もの越ごしにてなん会あひてはべる。ふすぶる...
原文・語釈 まだ文章の生にはべりし時 「まだ文もん章じやうの生しやうにはべりし時、かしこき女のためしをなん見たまへし。かの馬むまの頭かみの申したまへるやうに、公事おほやけごとをも言いひ合あはせ、私わたくしざまの世に住すま...
原文・語釈 咲きまじる色はいづれと 咲さきまじる色はいづれとわかねどもなほ常夏とこなつにしくものぞなき やまとなでしこをばさしおきて、まづ塵ちりをだになど親おやの心を取とる。 うちはらふ袖も露けき常夏とこなつに...
原文・語釈 君すこし片笑みて 君すこし片かた笑ゑみて、さる事とはおぼすべかめり。 「いづ方かたにつけても人わるくはしたなかりける身み物もの語がたりかな」 とてうち笑わらひおはさうず。 中将、 「なにがしは痴者しれも...
原文・語釈 男いたくめでて、簾のもとに歩み来て 男いたくめでて、簾すのもとに歩あゆみ来きて、 『庭にはの紅葉もみぢこそ踏ふみ分わけたる跡あともなけれ』 などねたます。菊きくををりて、 琴ことの音ねも月もえならぬ宿...
原文・語釈 中将、そのたなばたの裁ち縫ふ方をのどめて 中将ちゆうじやう、 「そのたなばたの裁たち縫ぬふ方かたをのどめて、長ながき契ちぎりにぞあえまし。げにその竜たつ田た姫ひめの錦にしきにはまたしくものあらじ。はかなき花...
原文・語釈 臨時の祭の調楽に 臨りん時じの祭まつりの調楽てうがくに、夜よふけていみじうみぞれ降ふる夜よ、これかれまかりあかるる所にて、思おもひめぐらせばなほ家いへ路ぢと思おもはむ方かたはまたなかりけり、内裏うちわたりの旅...
原文・語釈 この女のあるやう、もとより この女のあるやう、もとより思おもひいたらざりけることにも、いかでこの人のためにはと、なき手てを出いだし、おくれたる筋すぢの心をもなほくちをしくは見みえじと思おもひはげみつつ、とに...